「資格は取った。でも深い話ができない」
企業内診断士が、経営者の本音を“つかめる”ようになるまで
経営伴走トレーニングジムを受講した山野隆浩さんに、受講前の悩み、実践を通じた変化、そして伴走支援への向き合い方について伺いました。
PROFILE
山野 隆浩さん
中小企業診断士/経営伴走トレーナー。愛知県日進市在住。
豊田市内の住宅販売会社にて経理・経営企画を担当。
企業内診断士として、月次・決算業務に加え、事業計画の立案や各事業部の改善活動に携わる。
2022年度、中小企業診断士試験に合格。
「資格を取れば、人生が拓ける」——そう信じて勉強に打ち込んだ末に診断士資格を手にしたものの、その先で立ち止まってしまう人は少なくありません。
今回お話を伺った山野隆浩さんも、まさにその一人でした。企業内診断士として実務経験を積みながらも、「初対面の人と深い話ができない」という壁にぶつかっていたと言います。
そんな山野さんが「経営伴走トレーニングジム」を受講し、何を経験し、どう変わっていったのか。聞き手は、同ジムを主催する中小企業診断士の森琢也が務めました。
この記事で分かること
- 資格取得後に感じやすい「前に進めない感覚」
- 深い話ができない背景にある支援者側の不安
- 相手の本音に踏み込むために必要な視点
「資格は取ったのに、前に進めなかった」
森
まず、診断士の資格を取られたのが2022年度でしたね。普段のお仕事では、社外の方とお話しする機会は多かったんですか?
山野
いえ、基本的にはデスクワークが中心で、社内の方と話すことがほとんどでした。たまに銀行の方とやり取りすることはありましたが、社外の方と深く関わる機会は、正直あまりなかったですね。
森
なるほど。受講前は、どんな悩みを抱えていらっしゃったんでしょうか。
山野
一番は、自分自身のコミュニケーションが弱いという自覚でした。仕事で部下や上司、外部の方と関わる機会はあるんですが、どこか一歩踏み出せずに、深い話ができない。それがずっとモヤモヤしていたんです。
特に、相手の本音を引き出したい、信頼関係を築きたい——それは今も、これから診断士として活動していく上でも、すごく重要な部分だと思っていました。でも、どう動いていいか分からない。自分に何が足りないのかもはっきりしないまま、ずっとその延長線上にいる感覚でした。
森
「深掘りの質問ができない」という感覚だったんでしょうか。
山野
そうですね。表面的な会話も苦手だったんですが、それ以上に「あなたは本当はどう思っているんですか」という根っこの部分に踏み込めなかった。実は、自分自身も、自分が根っこで何を思っているのかよく分かっていなかったんです。
自分がそういう状態だから、相手にも深く踏み込めない。そのことに、うっすら気づいていました。そこを変えてみたいと思ったんです。
「予約した日が近づくたび、憂鬱だった」
森
経営伴走トレーニングジムを知ったきっかけは?
山野
森先生が主催されている診断士の勉強会に所属していて、先生のご著書を拝見したのがきっかけです。購入特典でこの経営伴走トレーニングジムのモニター募集を知って、調べていくうちに「すごく魅力的だな」と思って、直感的に申し込みました。
森
実際に受講が始まって、印象に残っていることはありますか。
山野
とにかく、最初はめちゃくちゃ緊張しました。経営者役を演じてくださる5人の方とセッション練習をするんですが、毎回バラバラの方なので、毎回緊張する。事前に「これで大丈夫」と準備して心を整えても、いざ人と話し始めると、準備していたことを全部忘れてしまうんです(笑)。「こうしようと思っていたのに、自分の中で全然違うぞ」と。それは毎回、強烈に覚えています。
森
正直なところ、しんどさもあったのではないですか。
山野
……ありました。最初の頃は、もう憂鬱だったんです。セッションの予約日が近づいてくると、「あと何日で来てしまう」と。自分で決めて予約したのに、心の奥底では「相手の都合でキャンセルにならないかな」なんて、ちょっと子どもっぽいことを考えていました(笑)。
それくらい、覚悟がいったんです。相手の方の時間もいただいている以上、実りのある時間にしたい。だからこそ、プレッシャーもありました。
森
途中で「もうやめようかな」と思った瞬間も?
山野
実はありました。あまりにも失敗が多くて、怖くなって、一時期は中断しようかと。でも、「この日は受ける日」と自分の中でルールを作って、それを守り続けたんです。深く考えずにやり続ける。そうしているうちに、ハードルが徐々に下がっていきました。
考えると不安になりますから。だから、考える前にやる。それが結果的に良かったと思っています。
録画を見返して気づいた、致命的な“クセ”
森
ご自身が変わるきっかけになった出来事はありましたか。
山野
5回のセッションが一通り終わって、2回目のセッションをお願いする段階で、自分の録画を見返したんです。そこで、いろんな失敗が見えてきました。
一番多かったのが、相手の話に先回りしてしまうこと。相手がまだ話している途中なのに、「あ、こういうことですよね」と、自分でまとめてフィードバックしたがるんです。たぶん親切心なんですが……。
森
必ずしも悪いわけではないけれど、やりすぎてしまうと。
山野
そうなんです。録画で見ると、その回数が明らかに多かった。相手は最後まで話を聞いてほしいのに、僕がその言葉を奪っていた。それに気づいてから、相手の言葉を「待つ」ことを意識するようになりました。
森
「待つ」というのは、実はすごく難しいキーワードなんですよね。
山野
本当にそうです。でも、この経験ができたのは今回が初めてでした。客観的に自分を見て反省点に気づき、さらに相手の方からもフィードバックをいただいて、率直な指摘を真摯に受け止められた。それがすごく良かったですね。
「待つ」と「リラックス」、その意外な順番
森
緊張についてはどう変化していきましたか。
山野
緊張を「なくす」のではなく、「自分は今緊張しているんだな」と受け入れることから始めました。その上で、初対面の方とどう信頼関係を築くか。そこで気づいたのは、自分の話し方よりも、聞き方のほうがずっと大切だということでした。
回を重ねるごとに、緊張の度合いが減って、代わりに「楽しみ」の割合が増えていったんです。「次はこうしてみたい」「相手にどれだけ楽しんでもらえるか」と考えるようになって、それがリラックスにつながっていきました。
森
興味深いですね。「リラックスできたから相手に集中できた」というより、順番が逆だった?
山野
そうなんです。自分軸から相手軸に寄せられるようになったら、リラックスできるようになった。相手の話をよく聞いて、待って、こちらの思いも伝える。それが徐々にできるようになっていきました。
「フィードバック」という、普段は得られない体験
森
この講座では、30分の実践のあとに15分間、相手からフィードバックをもらう形にしています。これはいかがでしたか。
山野
まず、皆さん必ず「良かったところ」から伝えてくれるんです。正直、30分やり切った直後は、自分へのダメ出しでへこんでいる。「またやっちゃった」と。
そこで「最初の挨拶がすごく良かった」「笑顔で接してくれて話しやすかった」と言ってもらえると、すごく救われました。自信につながるんです。
その上で、改善点も率直に教えてくれる。例えば僕、「なるほど」が口癖で、連発しすぎていたんですね。そうすると「なるほど」が軽く聞こえて、「本当に聞いてくれているのかな」と不安になる、と指摘されました。
森
それは、なかなか自分では気づけない。
山野
そうなんです。動画を見ても気づけなかった部分を、相手の言葉で教えてもらえた。これは家族や職場でも、なかなか得られない機会です。親しい人ほど、こういう率直なフィードバックはしてくれませんから。
振り返ると、「実りのある失敗」だったと思います。たくさん失敗したけれど、その一つひとつが次につながった。
「ここだ」を、つかめるようになった
森
質問のスキルについては、何か変化点をつかめましたか。
山野
森さんから教わったオープンクエスチョンの5W1Hや、相手の前提を変えてみる、視点を変えてみるといった質問が、とても参考になりました。
「逆の立場だったらどうですか」と思い切って投げてみると、相手の思考が切り替わって、別の角度から本音が見えてくる。質問のバリエーションが増えたんです。
そうやっていくうちに、相手の本心を「つかむ」感覚が出てきました。
森
「つかむ」というのは、どんな感覚なんでしょう。
山野
カードがたくさんある中から、「あ、ここだ」というものをスッとつかみに行くイメージです。「ここだね、逃がさないよ」という感じで、さらっていく。
相手がある言葉を発したとき、その裏には価値観が潜んでいるんですよね。表情や声のトーン、目線が変わる——そういうシグナルを感じ取って、「ここ」というポイントをつかんで、本心を引き出していく。
最後のほうで、ようやくそのイメージが少しずつつかめるようになってきました。
森
今のお話、一貫して「相手目線」なんですよね。すべての矢印が相手に向いている。
山野
受講後に一番変わったのが、まさにそこです。相手のことを考えて、真剣に耳を傾ける。それができることが多くなりました。
以前は、自分がどう思われているかが気になって仕方なかった。でも今は、相手がどう感じているか、相手にどう貢献できるか——そちらのほうが強くなりました。軸が変わったんだと思います。
「ワクワク」は、まず自分から
森
この講座では「経営者のワクワク感を引き出す」ことを大切にしています。山野さんはどう取り組まれましたか。
山野
これも本当に大変でした(笑)。初対面の方からワクワク感を引き出すのは、簡単ではありません。
でも、たどり着いた答えは——まず自分が楽しむことでした。相手が本当にありたい姿って、皆さん素敵なものを持っているんです。それを聞いていると、こちらもワクワクしてくる。そのワクワクが表情や言葉に出ると、相手も「あ、自分の考えでよかったんだ」と感じて、さらにワクワクしてくれる。
森
あえて、自分の軸を自分に置く。
山野
そうです。相手がどうなるかはコントロールできませんが、自分がワクワクするのは自分次第でできる。だから、まずは自分に軸を一度持ってみる。それを試してみるといいんじゃないかなと思います。
これから一歩を踏み出す人へ
森
最後に、これから受講を考えている方へメッセージをお願いします。
山野
今回、この経営伴走トレーニングジムを受けて本当に良かったと思っています。今までにない、かなり実践的な体験ができました。
特に、かつての僕のようにコミュニケーションに不安を抱えている方、これから診断士としてどう伴走支援をしていきたいか悩んでいる方には、力がついて学ぶことが多い講座だと思います。ぜひ受けてみてほしい。絶対に損はないと、自信を持って言えます。
森
山野さん自身は、これからどうしていきたいですか。
山野
ここで得たものは、どんな分野でも生きると思っています。今、企業再生の道に進みたいと考えていて、プロコンの講座も受けているんです。
実地の経験を積みながら診断士としてのスキルを高めて、少しずつ自信をつけて、いずれは独立に向けて現実にしていきたいと思っています。
その土台に、この講座は確実になっています。
編集後記
「つかめる何か」は、あなたの中にもある
「資格は取った。でも、自分に何ができるのか分からない」「経営者とまともに話したこともない」——かつての山野さんと同じ場所に立っている人は、決して少なくないはずです。
しかし、山野さんを変えたのは、特別な才能でも、前職の人脈でもありませんでした。「待つ」という、たった一つの選択肢を増やしたこと。そこから相手の表情が見え、価値観が見え、本心が「つかめる」ようになっていきました。
「自分がどう思われるか」から「相手がどう感じているか」へ。軸が一つ移るだけで、見える景色は大きく変わります。
経営伴走トレーニングジムが提供しているのは、コーチングの技術そのものではありません。「自分にも、人の役に立てるかもしれない」という手応えと、もう一度ワクワクできる自分です。
あなたも一歩を踏み出してみませんか
経営伴走トレーニングジムでは、対話を通じて相手の自発性を引き出す支援を実践的に学びます。
実践とフィードバックを重ねながら、支援者としての関わり方を磨いていきます。