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  • 支援者インタビュー特別版_飯山晄朗さん

答えを教える人ではなく、
答えが見つかるきっかけを一緒につくる伴走支援者へ

経営指導員時代にコーチングと出会い、スポーツや経営者へのコーチとして活躍する飯山晄朗さんに、「答えを持たずに臨む支援」や、これからの伴走支援に求められる姿勢について、実践クオリティシステムズ代表の左近仁が伺いました。

PROFILE

飯山 晄朗さん

家電メーカーでSE、MDを経験後、商工会の経営指導員に転職。11年間で5,000件超の相談をこなす。起業後は、講演・研修講師として延べ5,000時間、受講者17,000名を超える。中小企業大学校では「リーダーシップ講座」「部下指導のためのコーチング講座」「経営管理者コース」の講師も務める。またスポーツのメンタルコーチとしてリオデジャネイロ五輪で銅メダル、平昌五輪で金メダル、東京五輪で金メダルを獲得する選手をサポート。他にも歴史的大逆転劇を演じて甲子園出場を決めた高校を始め、全国制覇や全国表彰台など結果を出すチームやアスリートが続出している。
スポーツや経営の分野において対話を通じて相手の気づきと行動を支える支援を実践。現在は経営伴走トレーニングジム講師としても伴走支援に必要な対話のあり方を伝えている。

「何か価値を提供しなければならない」「支援者が答えを持っていなければならない」。企業支援の現場では、そうした思い込みが、かえって経営者の思考や言葉を止めてしまうことがあります。

飯山さんが語るのは、相手を引き出そうとするのではなく、相手が自然と話したくなる場をつくること。そして、答えを教えるのではなく、相手が自分で答えにたどり着くための対話の姿勢です。


「答えのない問い」が、コーチングとの出会いだった

―まずは、飯山さんとコーチングの出会いからお伺いしていいですか?
以前は商工会の経営指導員をされていましたとお聞きしていますが、コーチングを学ばれたのもその頃だったのでしょうか。

はい。経営指導員をしていたときですね。

―どういったきっかけで学ぼうと思われたのでしょう?

そうですね。経営指導員をしていると、本当にいろんな相談が来るんですよ。
例えば、制度融資を使って借入をしたいとか、運転資金や設備資金の相談ですね。そういう話は、それほど難しくないんです。どれくらい設備投資をしたら、どれくらい効果があるかを一緒に計算して、資料を作って銀行へ提出する。そういうことをやれば、お金を出してもらえますから。

問題は「これからどうしたらいいでしょう?」という相談です。これは、当時の僕には答えがありませんでした。だって、自分で経営したこともありませんし、分からないんですよね。金融制度や労働法、税法のことなら調べれば分かるし、分かる範囲でお答えできます。でも「これからどう経営していけばいいか」「後継者である息子をどう育てたらいいか」そういうことは、本当に分からなかったんです。

―それで、どうされたのですか。

「さあ、どうしようか」と思いましたね。当時はまだSNSも無い時代で、迷ったらとりあえず本屋さんへ行っていたんですよ。比較的大きな本屋さんへ行って、本棚をずっと眺めていたんです。そのとき、パッと目に飛び込んできたのが、『コーチングが人を活かす』という本でした。
日本で初めてコーチングを紹介した本だったんですけど、「コーチング」という言葉も新鮮でしたし、それ以上に「人を活かす」という言葉が、自分の中にすごく響いたんですよね。

それで本を手に取って、パラパラっとめくってみたら、「教えるんじゃなくて、引き出す」と書いてあったんです。
「ほぉ……」と思いました(笑)。今まで教えることばかり考えていたけれど、「引き出す方法があるのか」と。それが、僕とコーチングとの出会いでした。

それからはコーチングの本を見つけては読んで、現場で試して、また読んで……ということを繰り返しました。でも、そのうち「これは、ちゃんと学ばないと駄目だな」と思って。それで土日に銀座コーチングスクールへ通うようになりました。
当時はまだ北陸新幹線も無かったので、金曜日の夜に夜行バスで金沢を出て、土日に東京で学んで、また夜行バスで帰る。そして月曜日の朝から仕事です(笑)。 毎週ではありませんでしたが、講座のある日はそんな生活でしたね。

―実際に現場で試してみて、手応えはありましたか。

はい、ありました。コーチングを学んで現場で実践していくと、ちゃんと成果が出始めました。
僕はほとんど何も言っていないのに、経営者の方が勝手に自分で整理して「あ、分かった。ありがとう」と言って帰っていくんです。

今までは、こちらが「ああしたら、こうしたら」と話しても、「いやあ…」「ちょっと難しいですね」という反応が多かったのが、コーチングを取り入れてからは、僕はある意味、話を聞いているだけになりました。「そうなんですね」と相槌を打って、「それって、どういうことなんですか」と少し問いを投げる。それだけで相手の方が自分で答えを見つけて、「あ、分かった。ありがとう」と笑顔で帰っていく。
その姿を見たときに「これは行けるわ」と思いました(笑)。

―比較的早い段階で成果を感じられたのですね。

そうですね。とにかく学んだことをやってみようと思って、実践していました。
ありがたいことに相談は毎日のようにありますから、来る人、来る人に試していたような感じです。
最初は自分でも少しぎこちなかったと思いますが、続けていくうちに、「あ、なんか手応えあるな」という感覚が、少しずつ増えていきました。

「引き出そう」と思ったら、うまくいかない

―本屋さんでの出会いは、直感的なものだったんですか?

はい。もしあのとき本屋さんへ行っていなかったら、多分コーチングとは出会っていなかったと思います。でも僕の中の課題として「どうやって経営者の皆さんに理解してもらったり、やる気になってもらったり、こうやればいいんだって気づいてもらえるか」というものがあって、その課題を持った上で、本屋さんでずっと背表紙を見ていたわけです。
「コーチング」や「人を活かす」という言葉が飛び込んできたというのは、やっぱり当時の自分の中に何か響くものがあったんでしょうね。2001年頃の話です。

―「相手のやる気を引き出す」というのは、多くの人が理想としていることだと思います。本当にそんなことができるのでしょうか。

そうですね。「引き出す」というとちょっとおこがましいかもしれません。何かこちらが相手をコントロールしているような感じになります。僕はむしろ、相手の側が「気づいたら、自然に引き出されてしまっていた」という感覚になる状態が理想かなと思っています。
こちらが「引き出そう、引き出そう」と思えば思うほど、その気持ちは相手に伝わるんですね。
すると相手は身構えてしまって、会話が続かなかったりうまくいかなくなったりします。
よくコーチングを学んだとかコーチングをやろうと思う人は引き出そうとする。で、一所懸命質問を繰り出したりするわけです。

―聞く側が必死になってしまいそうです。

そうそう(笑)。「引き出そう」と思うから難しくなるんです。
そうじゃなくて、会話をしているうちに、相手が自然と話を整理したくなって、
「気づいたらたくさん話していた。」
「いつの間にか引き出されていた。」
そんな状態が、僕は理想なんじゃないかと思っています。

―それだけを聞くと、まるで魔法のようにも感じます。

いえ、魔法ではなく、あくまでスキルです。
ただ、スキルさえ使えばいいかというと、決してそうではありません。質問のバリエーションや技術はあるんだけど、その通り質問したからといって相手が必ず本音を話してくれるわけではないんです。

何が成否を分けるかというと、お互いの間に流れる雰囲気や関係性なんですよね。
簡単に言えば、相手が「話したくなる状態」をつくることです。
その状態ができていないのに、こちらがどれだけ熱心に質問を重ねても、「いやあ、難しいですね。」「ちょっと分からないです」で終わってしまいます。

だからこそ、僕は最初の場づくりが何より大事だと思っています。
一対一であれば、二人の間に流れる空気感ですね。こちらが身構えて「さあ、質問しますよ」という態度で臨めば、相手も「どんな質問が来るんだろう」「うまく答えなきゃ」と緊張します。そうすると、脳がリラックスしていない状態なので思考も止まってしまいます。
だからリラックスできる場や雰囲気、今で言う心理的安全性ですね。これが対話では一番大事なんじゃないかなと思っています。

―なるほど。そのためには、まずは質問する側がリラックスしていること、ですか?

そうです。そうすると相手の方もリラックスできるようになってきますから。緊張感などは全部伝わっちゃいますからね。

「答えを持たずに」支援に臨む理由

―とはいえ支援の現場では、「何か価値を提供しなければならない」という緊張感を感じる人も多いと思います。飯山さんは、そうした意識を持たずに臨まれているのでしょうか。

はい、持たずに行きます。だって、その場で何が飛び出してくるか分からないじゃないですか。
事前に準備をしても「使わなくてもいい」という覚悟があればいいんですが、準備をするとそれを「伝えなきゃ」と思ってしまう。その結果、場の雰囲気がガラッと変わってしまったり、それまでの流れを断ち切ってしまったりすることがあるんです。だから基本的には、自分が持っているものを「出すかどうかは分からないし、出さないという選択肢もある」というスタンスですね。
僕は対話の前に、「今日はこれをやろう」「これを伝えよう」とは考えません。その場の空気感や、相手から出てきた言葉に合わせて伝えるようにしています。

―一般的には「支援者側が答えを持っていないと、価値提供が出来ない」と考えられています。答えを持たずに行くことが、なぜ支援につながるのでしょうか。

確かにそうですよね。それこそマジックみたいな話に聞こえるかもしれません(笑)。で、現実どうするの?っていう。

でも、分かりやすく言うと、

答えは僕が提供するものじゃなくて、相手が考えることなんです。

それは、その人の経営であり、その人の人生です。実際問題として、僕の中に答えがあるはずがありません。どうしたいかは、最終的にはご自身で決めることなんです。

もちろん、「こうしたらいいんじゃないかな」というアイデアが浮かぶことはあります。
でも、それが正解とは限りません。あくまでも「僕はそう思う」というだけなんです。
だから、相手から「飯山さん、何か知恵を貸してください」と言われたら、「じゃあ、僕が思ったことをお伝えしてもいいですか」という形でお話しすることはあります。
でも、聞かれてもいないのに、こちらから一方的に伝えることはほとんどありません。
結局、その人自身が考えるべきことですし、答えはその人の中からしか出てこないんです。

僕は「相手の中に必ず答えがある」というつもりで接しています。こちらが「答えを提供しなければ」と思うと、こちらばかりが話してしまう。すると相手は話せなくなって、自分で考えることもやめてしまうんです。相手が黙るから、焦ってこちらはさらに話す…。
そういう対話が終わると、話した側は満足感があるかもしれません。でも相手には何の行動変容も起きません。「分かりました、頑張ります」と言って帰るだけ。それでは極端な話、支援としての意味がなくなってしまう。

実は僕もそこが課題でした(笑)。どうしても言いたい、喋りたい、アドバイスしたい、みたいな(笑)。その衝動をいかに自分自身でコントロールできるか。相手からどんな話が出てきても受け入れる、受け止める心の余裕を持つ必要があるということです。
重要なのは「こちらがうまくできたか」ではなくて、主役である相手の中に「何か変化があったか」「新しい気づきが生まれたか」、そこが大事です。

経営伴走とは、相手と「位置関係」を同じにすること

―昨今、診断士の業界で伴走支援という言葉がよく使われるようになりました。その一方で伴走支援という言葉の中身は人それぞれのように感じています。飯山さんが考える伴走支援とは、どのようなものなのでしょうか。

まず「伴走」という言葉をそのまま捉えると、相手に寄り添い、一緒に走り、一緒に歩んでいくことです。本来は、それをそのままやればいい。
だけど、先ほどお話ししたように自分が何かを提供しようと思っているということは、自分が相手より前に出てしまっている。相手の横に並ぶのではなく、一歩前に立ってしまっている状態です。それではもう「伴走」ではないですよね。伴走というのは、相手に寄り添い、目線を同じにすることです。この感覚が掴めずに悩んでいる人が多いのではないでしょうか。

―導くのではなく「一緒に答えを探す」というスタンスですか。

そういうことです。一緒に答えを探し、一緒に新しいものを見つけ出していく。そんな感覚です。
伴走は、寄り添い、同じ目線で動くものです。こちらが最初から答えを持っているということ自体が、伴走のスタンスとしては好ましくないのです。
だから僕は「答えを教える人」ではなく「答えが見つかるきっかけを一緒につくる人」でありたいと思っています。

これほどまでに「伴走」ということが言われるようになったのは、AIの進歩も関係していると思っています。今の時代、「こういう答えがありますよ」と提示したところで、「その答えはAIでも分かるんじゃない?」となってしまうこともある。さらに言えばその答えが本当に正解なのかも分からない。
だからこそ、これから求められるのは知識を教えるのではなく、一緒に寄り添いながら答えを見つけていく、相手の人が向かいたいゴールに向かいながら自分で話をして自分で答えを見つけられるような、そういう対話のパートナーなんじゃないかなと思っています。

―今行っている「経営伴走トレーニングジム」ではそういった人を増やしたいところです。

そうですね。
どうしてもトレーニングジムだから「スキル(やり方)」に焦点が当たりがちだけど、その後に「あり方」が大事になってきます。「あり方」というのは、相手への関心の向け方や、答えを持たずに場に臨む姿勢、そういった内面のスタンスのことです。
まずスキルや知識は理解して、やるべきことを体得して頂きたい。まずはやり方をお伝えしているので、それを何回も練習して、自分の中で「ある程度できるようになってるかな」というものが見えてくると、少し自信になってきます。
その上で、どうやって相手の方に話をしてもらえるようにするか、その人なりの対話のあり方を模索する段階があるのかなと思っています。

支援者を目指す人へ――経営ではなく「その人」に興味を持つこと

―最後に、これから中小企業診断士をはじめ、伴走支援や企業支援に携わりたいと考えている方へメッセージをお願いします。

根本的な話になりますけど、「人に興味を持ってほしい」ということですね。
今日お話ししてきたことは、全部そこにつながっています。
話の内容や経営そのものじゃなくて、その人に興味を持ってほしいんです。話の内容や経営ばかりに意識が向くと、「何とかしなきゃ」という発想になりがちです。

そうじゃなくて、
「この人は、どうしてこんな話をしているんだろう」「こういうとき、こんな表情をするんだな」そんなふうに、その人自身に興味を持ってほしいんです。
そうすると、こちらの雰囲気って必ず変わるんですよ。
相手も「あ、この人、自分に興味を持ってくれている」と感じて、話しやすくなっていきます。
逆に話の内容とか経営のことばかりになってしまうと、自分は置き去りにされて、違うところで話が進んでいるような感覚になってしまいます。

僕たちは「人」と向き合う仕事をしています。もし話の内容だけを扱うのであれば、それはAIの方が得意です。だからこそ僕たちは、その人に興味を持ってその人と向き合って、対話をすることに価値があるんだと思っています。

―もし経営の話にならなかったとしても、それでいいのでしょうか。

いいじゃないですか(笑)。
経営者であれば、そのうち経営の話になりますから。だから、信じて待つということなんです。
例えば、延々と釣りの話をしていてもいいんですよ。僕は釣りをしませんから、釣りには興味がありません。同じように製造業の経験がない人が、製造業の専門的な話を聞いても、理解が追い付かず、興味を持って聞き続けることは難しいと思います。

そんな時は、聴く焦点を変えることが大切です。話の内容ではなく「この人は、この製品や技術にこんな思いを持っているんだ」という、その人自身に焦点を当てて、興味を持って聞く。それが伝わると、相手は安心して話してくれます。

もちろん、経営者は答えが欲しいときもありますが、それはもうAIが担う時代です。
だからこれからは、
「誰かと話をしながら何かを見つけたい」
という感覚が、ますます大切になってくると思っています。

対話による伴走支援を、実践で身につける

経営伴走トレーニングジムでは、知識を伝えるだけではなく、経営者の言葉を聴き、問いを置き、相手自身の気づきと行動を支えるための対話力を実践的に学びます。
飯山講師による事前説明会(伴走支援に関するミニ講義&質疑応答)も予定していますので、ご興味がある方はお気軽にお申込みください。

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