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「自分には何もない」と思っていた診断士が、
経営者から頼られ続ける存在になるまで

中小企業診断士の資格を取り、「診断士らしい仕事って何だろう」と迷い続けた。
それでも今、盛澤 陽一郎さんは外国人ビザ&経営コンサルティングという独自の領域を確立し、中小企業経営者から継続的に頼られる専門家として活躍している。
「自分には勝てる武器がない」という不安を乗り越えた先に、何があったのか。

PROFILE

盛澤 陽一郎さん

中小企業診断士・行政書士。大手金融機関に勤めるも勤務先が合併。“吸収合併された側”の辛さを目の当たりにし、税理士事務所に転職。その後東京都振興公社での経営支援経験を経て独立。現在は外国人ビザ&経営コンサルティングの領域で、中小企業経営者を継続的に支援している。


「大企業に入れば安心」が崩れた23歳の春

-まず、診断士を取ろうと思ったきっかけから聞かせてください。

大学が商学部だったので、もともとビジネスに興味がありました。卒業後は銀行に就職したんですが、入社してすぐ、勤めていた銀行が合併で吸収されることになって。

-入社してすぐ、ですか。

23歳の時です。財閥系同士の合併だったんですが、吸収される側は本当に大変で。管理業務の人間は「いらない」という話になっていく。半沢直樹の世界が目の前で起きているみたいな、えげつない現実を23歳で見てしまったんです。

「大企業に入っても、会社がなくなることがある」というのを身をもって知って、ここにいてもモチベーションが続かないと感じました。それで「手に職をつけなければ」と思い、転職を決めました。

-転職先が税理士事務所だったんですね。

税理士を目指そう、働きながら勉強しようと。でも入ってみたら、自分には適性がないと気づいたんです。

税理士の仕事って「過去会計」なんですよね。去年の数字をまとめて今年の確定申告書類を作る。でも自分が燃えるのは、「これから売上をどうつくっていくか」という未来の話なんです。数字を仕掛けていく側の仕事がしたいと思っていた時に、本屋で「中小企業診断士」という資格を見つけました。

「中小企業診断士らしい仕事」を求めて、東京都振興公社へ

-中小企業診断士を取ってから、どんな仕事をされたんですか。

資格を取ったはいいものの、「診断士らしい仕事ってなんだろう」と答えが出なくて。それで求人票を調べたら、東京都の振興公社が「診断士優遇」と書いていて、ここなら診断士らしい仕事ができると思って転職しました。

振興公社では商店街支援から始めて、創業支援、製造業の自社製品開発コンサルまで幅広く経験しました。

-商店街支援って、とても大変な印象ですが実際はいかがでしたか?

大変でしたね(笑)。ある商店街では、新しいイベントをやりたい若手と、保守的で批判的な意見ばかり言う古参の方で対立したり……。

でも、単純に売上を伸ばすだけじゃなく、利害関係者の間に立って第三者として機能することで、状況を打開していく仕事が面白くて。中小企業診断士としての役割を発揮できている実感がありました。

-充実した日々をお過ごしの中で、独立しようと思ったキッカケは?

ある時期から女性の創業支援を担当していたのですが、女性の場合、マインドセットのサポートがすごく重要なんです。「私なんかが創業できるわけない」という思い込みを外してあげることが、技術的な支援より先に必要なことが多い。

メルカリで何かを売る体験から始めてもらって、「お金のやり取り」という感覚を持ってもらって、PDCAを回す習慣や考え方が整っていくと、「あ、創業できるんだ」と自信が持てるようになる。そんな支援を繰り返していたら、いつの間にか「自分自身(盛澤さん)も独立できるんじゃないか」と思うようになっていました(笑)。

そんな時、子供が生まれて。妻も私も共働きで、かなり忙しい職場で、子供が熱を出しても休めない状況が続いて、妻か私かがやめるかという話になり、「それなら!」と独立を決めました。2019年の夏のことです。

「完全独立」はすぐではなかった。最初の1年で種をまく

-独立当初、どうやって仕事を獲得したんですか?

最初はコンサル系と人事・補助金系の会社、二社と業務委託契約を結びました。ある程度固定のベースをもらいながらスタートした形です。

ただ実態は、週5〜6日稼働になってしまって。在宅でできる部分もあったので子育てとは両立できましたが、先方は正社員と同じように動いてほしいという感じでした。

-なんだか、独立しても以前とあまり変わらない状況だったわけですね。

そうですね。1年経って、方向性が違うなと感じていたところにコロナが来た。補助金需要が一気に増えて、直接受注できる仕事が増えていったタイミングで完全独立しました。

その1年間で種まきとして意識していたのは、税理士・社労士などの士業の仲間との協業関係を作ること。「補助金と助成金の違いがよくわからない」という問い合わせが士業の知り合いに来た時に、「補助金だったら盛澤さんに」と回してもらえるようにしていました。

-なるほど!そんな種まきもしたんですね。あれ?本を出したのもその頃ですか?

商店街系の本や健康経営の本を、他の士業の方々と共著で出しました。本って、名刺代わりになるんですよ。「この分野の本を書いている人」として紹介してもらえる。日経新聞に本の広告を出してみたこともあって、「日経に載ってたから信頼できそうだと思って」と言われたこともありました。お金払って広告を出しただけなのに(笑)。

「診断士として自信がない」から、行政書士へ

-補助金バブルで忙しい時期に、行政書士の資格を取ってましたよね?なぜ、ダブルライセンスを目指したのですか?

診断士として自信がなかったから、です。

独立して他の診断士の方々と一緒に仕事する機会が増えたんですが、すごい人たちばかりで。例えば、「製造業一本でずっとやってきた」という専門性の深い方に、自分は勝てないと正直思ったんです。

経歴的にも、銀行・税理士事務所・振興公社と転々としてきたので、「一本筋が通った専門性」という意味では弱い。そんな中で次の手を考えた時に、「ダブルライセンス」が浮かびました。

-それにしても、ずっと気になってたんですが、なぜ行政書士だったんですか?

これから伸びる市場を考えた時に、外国人関連だと思ったんです。少子化で国内市場が縮んでいく中で、外国人を働き手として、または観光客として取り込む流れは絶対に続く。その時に関係する資格として、行政書士と組み合わせたら面白いと思いました。

もう一つの理由はリスク回避です。当時から「補助金申請は行政書士の独占業務だ」とSNSで議論になっていたので、その問題を回避するためにも取っておこうと。

-なるほど。実際のところ、思惑は当たりましたか?

はい、外国人ビザ関連の仕事は増えています。最近は中小企業診断士の仲間からの相談も来ています。例えば、養成課程の先生からも、顧問先に外国人従業員がいて、実はビザがグレーだったと気づいた時に、診断報告書にそれを指摘できないと実務報告として価値がなくなってしまうとサポートの依頼がありました。確実に、世の中でそういった場面が増えてきていて、お声がかかるようになってきました。

経営者と向き合う時、必ず聞くこと

-ヒアリングや経営者との対話で、大事にしていることはありますか。

最近はビジョンを必ず聞くようにしています。「5年後、10年後、この会社はどうなっていると思いますか」「社長、いつまで働きたいですか」という問いを、できるだけ早い段階で聞くようにしています。

-補助金やビザの相談で来た時でも、ですか。

そうです。補助金も外国人ビザも、手段でしかないんですよ。手段を突き詰めすぎると、「どこまでやったら違法じゃないか」という話になってしまう。それって経営の本質じゃないと思っていて。

私がやっていることは結局、企業を適正なホワイト企業にしていくことなんですが、そのための牽引力は、社長ご本人の「こういう会社にしたい」という思いからしか生まれない。だから補助金の相談で来た社長にも、まず「どこに向かいたいのか」を聞く。そこから話が思わぬ方向に広がることも多くて、「実はもう売上を増やすより、事業承継を考えたい」という話になったりもします。

稼げる診断士と、そうでない診断士の違い

-これまでいろんな診断士と一緒に仕事してきた中で、活躍している方の共通点は何だと感じますか。

「質実剛健」という言葉が一番しっくりきます。人事制度、改善計画など、ずっと同じ専門分野をやり続けている方が強いと感じます。流行りに飛びつかず、地に足がついていて、経験と知識を積み重ねてきた方は、華やかには見えないかもしれませんが、「絶対叶わないな」と思わされます。

-逆に、うまくいかない方には共通点がありますか。

「自分はこれができる、だから仕事を回してくれ」という自分アピールになっている方は、受注につながりにくい印象があります。うまい方は逆で、相手が何を必要としているかが見えている。あとは単純に、友人が多い人が強い(笑)。

-それはどういう意味ですか。

独立というと「一匹狼」のイメージがあるんですが、実は逆で。他の人にどれだけ頼れるか、が大事だと思っています。「こういう時どうしたらいい?」と気軽に相談できる仲間がいる人は強い。ただ、一方的にテイクするんじゃなくて、お互いに助け合える関係が築けているかどうか。共存できるアライアンスを積み重ねてきた人が、長く活躍できる気がします。

-これから独立を考えている方へ、アドバイスはありますか。

「どういう生き方をしたいか」を先にイメージすることだと思います。お金を稼ぎたいのか、家族と過ごす時間を増やしたいのか、二拠点生活をしたいのか。それが見えていないと、独立してもゴールのない旅になってしまう。

特にお金だけをゴールにしていると、稼いでも稼いでも満足できない、ということになりがちです。「理想の生活スタイル」という形あるゴールを持てると、自分のやることが自然と定まってくると思います。

編集後記

「自信がない」からこそ、次の手を考えて動く

盛澤さんの話を聞いていて印象的だったのは、節目節目に「自信がなかった」と語りながら、その都度、次の手を考えて動いてきたことです。

「診断士として自信がない」からこそ行政書士を取り、外国人ビザという誰もいない領域を開拓した。「強みが絞り切れない」からこそ、本を書き、協業ネットワークを作り、紹介が回る仕組みを育てた。

経営者のビジョンを引き出すことを大切にされているのも、自身が「どう生きたいか」を問い続けてきた経験があるからこそだと感じました。

経営伴走支援スキルを身につけたい方へ

盛澤さんがインタビューの中でおっしゃっていた、「補助金の相談で来た経営者にも、まずビジョンを聞く」というスタンス。これこそが、経営伴走支援の核心です。

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取材・文:実践クオリティシステムズ株式会社 ※本記事は本人の確認を経て掲載しています。一部、固有名詞等はぼかして掲載しています。