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「個の専門性を、組織の強さに変える」独立の戦略。
現場主義とチームで大手コンサルと競い、選ばれる中小企業診断士

大規模成長投資補助金のコンペで、大手監査法人やメガバンク系コンサルと競り合い、選ばれる。上場企業や中堅企業を相手にしながら、本嶋さんはあくまで「中小企業診断士」として戦っている。武器は、400社以上の現場を歩いた経験と、「チームで挑む」という独自の戦略だ。多くの中小企業診断士が「独立して稼げるか」に不安を抱える中で、トヨタ系大手企業を辞めて独立した本嶋さんはどんな道筋を描いてきたのか。じっくり聞いた。

PROFILE

本嶋建男さん

中小企業診断士。大手自動車部品メーカーのサプライヤーで生産管理・グローバル調達・営業を経験した後、2021年に独立。現在は製造業の現場経験を持つ3名の代表によるチームで、製造業を中心とした経営支援や大型補助金案件に取り組む。


「現場が好き」から始まった、製造業一筋のキャリア

- 本嶋さん、お久しぶりです。あらためて、今のお仕事の内容から教えてください。

製造業の支援を中心にやっています。特に、大規模成長投資補助金や成長加速化補助金といった大型案件が多くて、複数件を手がけています。上場企業さんとご一緒することもあるので、正直、中小企業診断士の枠から少しはみ出しているかもしれません。

- いやいや。そもそも、中小企業診断士はこれをしなきゃいけない、という決まりはないですからね。
  ちなみに診断士になる前は、どんなキャリアを歩まれていたか、改めて教えてください。

大学のゼミが、もともと経産省出身の先生のところで、中小企業論や産業集積論をやっていたんです。その影響も強くて、周りは意外と銀行やマスコミに行く仲間が多かった中で、私はメーカーを選びました。就活で受かった中から、完成車や完成品メーカーに行かず、あえて大手自動車部品メーカーのサプライヤーに入ったんです。

なぜかというと、大学時代の研究テーマがサプライヤー研究だったので、実際に自分がその立場に入って、理論と実践を確かめてみたかったんです。振り返ってみると、会社員時代は18年。生産管理を7年、グローバル調達を5年、営業を6年ほど経験しました。とにかく現場や技術部と絡む仕事が多かったですね。

- ものづくりの現場への興味は学生時代から強かったんですか?

みんなが嫌がる工場勤務を、自分から配属志望したくらいです(笑)。泥臭いのが好きなんですよ。メーカーって、10年くらいやらないと本当のところが分からない。じっくり現場を経験できたことが、今の自分の土台になっています。

「中小企業診断士だけでは足りない」を、現場経験で埋める

- 独立を決意したのは、どんな経緯だったんですか。

社会人大学院で経済学の修士を取ったあたりからです。診断士取得から3年目です。サラリーマンの今後を左右する要素が、横のつながりや政治力といったものであることに、少しお腹がいっぱいになってきてしまって。それで脱サラを決めました。2021年の夏くらいなので、立ち上げた会社は今5期目ですね。

- 独立の相談を受けていたころが懐かしいです。あの頃、沢山悩まれていましたが、独立してみて、ご自身の強みはどこにあると感じましたか。

やっぱり現場です。今まで400社以上は実際に訪問していると思います。事業計画をお手伝いする時も、必ず現場にお邪魔する。会計事務所経由の補助金支援だと、現場を見ずに支援をする人も多いと思うんですが、私は絶対に現場を見ます。現場を見るとイメージがつかめるんです。

よく「中小企業診断士だけだと、ちょっと足りないよね」と言われるじゃないですか。私の場合は、その足りない部分を、現場に出て現場感をつかんでお客さんと話すことで補えた。製造業をやってきた強みが、そのまま付加価値になっているのかなと思います。

「一人でやらない」——面で勝負するという選択

- 皆聞きたいところだと思うのですが、独立後、お仕事はどのように広げていったんですか。

最初は展示会でビラを200枚、300枚配ったりしていたんですが、まったく繋がらなくて(笑)。個人事業主のお手伝いや、税理士法人からの仕事から始めて、そこから、わらしべ長者みたいに少しずつ広がっていきました。今では大手金融機関さん経由の仕事もいただけるようになりました。
実績がついて評価されると、大型補助金のコンペで大手監査法人やメガバンク系コンサルと競合しても、選んでもらえるようになるんです。7社くらいでコンペになることもあります。

- それはすごいですね。大手が競合になっても、本嶋さん達が選ばれる理由は、どこにあるんでしょう。

大手コンサルの場合、案件によっては営業と実際の支援担当が分かれることもあると思います。私たちは、製造業の現場経験を持つメンバーが提案段階から実際の支援まで直接関わる。そこを安心感として評価していただけているんだと思います。
もう一つ大きいのが、今は3名の代表で会社を経営していることです。3人とも大手製造業出身なので、お客さんも安心して任せてくれる。私個人ではなく、異なる製造業経験を持つチームとして提案できるようになったことが、大手企業との取引を広げる大きな転機になりました。

- 3人代表というのは、珍しい形ですね。

独立診断士は、個人で完結する働き方になりやすいと思うんです。でも、それだと受けられる仕事の規模にも限界がある。せっかく大手企業で働いてきたなら、横の連携がものすごく大事じゃないですか。一人で鉄砲を撃つより、隊列を組んで、ここは戦車、ここはバズーカ、と役割分担して攻めるほうが力が出る。毛利家の三本の矢と同じで、一本だと折れやすいけど、三本だと強いんです。

多様性が、強さになる

- とはいえ、3人でうまくやっていくのも難しいと思います。ましてや、組織になじまなかった独立中小企業診断士。3人でうまくやっていく秘訣はなんですか。

周りには「代表は一人に絞らないと意思決定できない」とよく言われるんですが、もう5年以上続いています。3人だと、意思決定の時にちゃんと再検討がされる。それぞれ異なる視点から、お互いに「何が正しいか」を確かめ合える。視野も広くなるし、「自分が自分が」ではなく「どうすればもっと拡大できるか」「品質を上げられるか」という面で考えられるようになりました。

全員が製造業出身なんですが、完成品メーカー、サプライヤー、素材会社と、製造業でも全然違うんです。パーソナリティも違う。だから、いろんなお客さんが来た時に「ここの部分は自分が向いている」と協力体制を構築し、多様な目線で回答も出せる。振り返ると、強みのほうが圧倒的に多かったですね。

- 3人で続けていく中で、本嶋さんはどんなことを大事にしていますか。

判断に迷う時は、お客さんの考えを優先することですね。こちらがああだこうだ言っても、やっぱりお客さんがどうしたいのかが大切なので、そこはしっかり考えを持って答えを出していく。
あとは、一人じゃないことの良さって、よもやま話ができることなんですよ。サラリーマン時代は、何もしなくても2〜30人と話すじゃないですか。それが一人だとなくなる。悶々と仕事するより、ああでもないこうでもないと話せるメンバーがいたほうが、圧倒的にひらめきや気づき、学びも多いですね。

自分たちの専門性が活きる顧客層へ、意図的にシフトする

- 中小企業診断士ですが、取引先はだんだん大きな企業へ移っていったんですね。

困っている小さな会社のお手伝いも多くしていました。その中で、投入する時間と提供価値のバランスについて考える機会が増えていったんです。事業の拡大に伴い、中堅・大企業様の複雑な大型プロジェクトにも支援の幅を広げていきました。もちろん規模だけで決まる話ではありませんが、自分たちの専門性をより高く評価していただける領域へ広げていく必要があると感じるようになりました。
そこで、自分たちが疲弊する働き方を続けるのではなく、より付加価値を発揮できる顧客層へ少しずつ軸足を移していきました。お客さんの層を意図的にずらすことも、独立後の事業を持続的に成長させる一つのやり方だと考えました。

- 大きな(資本規模の大きな)お客さんだと、何が違うんですか。

資本規模の大きいお客さんは、アウトプット重視で成果を見てくれる傾向があります。契約や評価の基準も明確で、提供した価値をきちんと見てもらえる。だから、自分たちの専門性や成果を評価していただけるお客さんと付き合うことが大事だと、5年やる中で分かってきました。
ただ、その分プレッシャーもあります。特に補助金支援は結果を出さないとダメな世界ですし、大きいお客さんは役員レビューを何度も重ねて検討プロセスも長い。独立後は、営業から成果まで自分たちで責任を負う必要があります。粘り強くサポートして、ちゃんとアウトプットに責任を持たないといけない。人に与える価値の対価が報酬だということは、忘れないようにしています。

商流を作り、環境で自分を押し上げる

- 改めて独立当初は不安だらけだったと思います。ターニングポイントはどこでした?

様々なお客様がおりますが、今までの結果や実績が認められて、大手金融機関さんとの商流がとれたのは、大きかったです。拠点や商流が本当に大きいと思います。得意先と組んで新規案件の話がそこから流れてくるようになると、時間も含めて決まりやすくなりました。追い風が当たるところにいれば、新しくチャンスが与えられる感じです。これも、代表メンバーの総力でやってきたからこそだと思います。

- 独立して、本業以外のお仕事や活動は何かなさっているんですか。

中小機構の名古屋支部でカーボンニュートラルの相談員を3〜4年やっています。みんなお金にならないからやらないんですが、ある半導体系の会社さんと「一緒にやりましょうよ」とずっと取り組んでいたら、レベルがどんどん上がって、大手半導体製造装置メーカーのサプライヤーの代表事例として報告することになったんです。仕事もすごく増えたそうで、お客様からも取引先から褒められたと聞いて。

コンサルって、こちらが何かをやるわけじゃないんですよ。お客様と一緒にやる。それがやる気につながるし、アウトプットの方向性を一緒に示せる。まさに伴走支援ですよね。カーボンニュートラルというニッチな切り口でも、売上アップや利益増加につながるんだと分かりました。

- あらためて本嶋さんはチャレンジャブルだなと思うのですが、チャレンジする上で大切にしていることは何ですか?

考えた通りにしか、人間は行動できないと思うんです。だからこそ、レベルの高い環境に身を置く。大きいお客さんや大きい仕事で、プレッシャーを受けながら成長していく。最近は不動産の勉強会や、事業家の方と交流したり、あえて刺激のある外の世界に自分を当てるようにしています。挑戦や成長できる環境を意識し続けると、それが当たり前になってくると思います。

資格者同士の交流だけでなく、お客さんの現場へ出る

- これから独立を目指す中小企業診断士に、どんなことを伝えたいですか。

診断士に合格してすぐの頃は、どうしていいか分からないから、資格者同士の交流に時間を使いがちだと思います。もちろん、そうした交流も大切ですが、私は早い段階からお客さんと接点を持つことも大事だと思います。「中小企業診断士」と言うくらいなら、まずは中小企業の人と実際に関わってみる。そこから得られる学びは大きいんですよね。

あとは、私も最近脱サラの相談をよく受けるんですが、私は「やるだけやってみたら」と言います。仮に思うようにいかず再就職することになったとしても、診断士という資格が一つのセーフティネットになる。下限がある中で、上限の勝負ができる。

- とはいえ、本嶋さんご自身、いい会社を辞めるのは、怖くなかったですか。

怖かったですよ。辞めた時は「俺は何をしてるんだろう」と、夜中に起きてしまうこともありました。でも怖い反面、脳みそが全部解放された感覚があって。それまでは自動車やサプライヤー目線ばかりだったのが、「何をしてもいいんだ」と考えると、使える領域がものすごく広がった。辞めるだけで、すごい刺激がありました。

- ちなみに退職決断まで、どれくらいかけたんですか。

実は、2〜3年かけています。脱サラする前に、会社と同じくらい稼げる状態になってから辞めました。お客さんも5〜7社くらい捕まえてから。ゼロか百かじゃなくて、ゼロから一でもいいからやってみる。片足ずつ踏み込んでみるのが大事だと思います。

- 最後に一言、お願いいたします。

診断士を持っているかどうかで大きく違うし、そこから行動を起こすか起こさないかで、さらに大きく違う。ポジションばかりキープするんじゃなくて、一回アタックを仕掛けてみる。周りと比較ばかりせずに、自分が達成したいところにアタックしてみることで、アウトプットの経験値が得られると思います。

編集後記

本嶋さんのインタビューは、これまでの「弱さを乗り越えた」物語とは、少し毛色が違う。徹底した戦略家の言葉が並ぶ。

だが、その戦略の根っこにあるのは、意外なほどシンプルだ。「必ず現場を見る」「一人でやらない」「お客さんと会いに行く」——どれも、相手の実情に自分の身を寄せていくという姿勢に貫かれている。大手コンサルと競いながら選ばれるのは、豪華な肩書きではなく、目の前で製造を理解し、自分の手で最後までやり切る誠実さだった。

そして「考えた通りにしか人間は行動できない」という言葉。だからこそ環境を変え、背伸びを当たり前にしていく。本嶋さんの5年は、独立とは「何を捨てるか」ではなく「どこに身を置くか」の選択なのだと教えてくれる。

経営伴走支援スキルを身につけたい方へ

本嶋さんが語る「コンサルは、こちらが何かをやるわけじゃない。お客様と一緒にやる」という言葉。カーボンニュートラルという地味な切り口でも、伴走することで売上や利益につなげていく——これこそが、経営伴走支援の本質です。

専門知識や資格を持っていることと、経営者に選ばれ続けることは、必ずしもイコールではありません。現場に足を運び、相手の実情に寄り添い、一緒に成果をつくる「あり方」こそが、長く頼られる専門家をつくります。

経営伴走トレーニングジムでは、本嶋さんのような「経営者に寄り添い、一緒に成果をつくる診断士」になるための実践スキルを、9回以上の講義と10回以上のロールプレイで身につけていただけます。

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取材・文:実践クオリティシステムズ株式会社 ※本記事は本人の確認を経て掲載しています。一部、固有名詞等はぼかして掲載しています。